【ネタばれやや注意】
半地下の家族の寄生先には、さらに地下の住人がいた… コメディなのかスリラーなのか、分類できない後味のエグみ
【一言】やっぱりアカデミー賞とるだけあります
【映画について(あらすじ)】第72回カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞!世界がその才能を絶賛する若き巨匠ポン・ジュノ監督×名優ソン・ガンホ。“ネタバレ禁!”100%予測できない展開に全ての感情が揺さぶられる、超一級エンターテインメント作品!(公式ホームページより)
【レビュー】この映画で何回笑っただろう。とにかく前半はブラックユーモア炸裂シーンのたびに爆笑してしまった。主人公たちの「職場」での行動、半地下と地下の間の綱引き、北朝鮮のニュースばりに高らかに宣言される「核ミサイル」!
とにかくテンポよく、転がる賽を追うように展開を追い、驚きとブラックな笑いに見舞われる前半。ところが、後半、地下に突き落とされるように降りかかる恐ろしさと狂気…この手加減のなさが容赦ない。え、さっきまでのコメディさはどこへやら?という見る側の困惑をよそにシリアスさが極まっていく。明るみに出る地下と地上の圧倒的格差、取り返しのつかなさ。
面白いのは半地下の住人と完全地下の住人の「地上」を見つめる目線の違いである。完全地下の住人は地上をもはや崇拝すらしている様子である。そこには彼らと自分は本来は同じ人間(国民)であるという意識が欠落している。おこぼれをもらって生きているという感謝に溢れている。「寄生して養分にしてやった」のではなく「私が生きながらえられるのは全てあなた様のおかげです」という姿勢。しかし、圧倒的地上から見れば半地下も地下も地下に違いはなく、同じものを放っている。それが表れるのは、うららかな日差しの注がれる地面に突如出現したかれらに地上の住人が反応してとったしぐさ。それをみたある人が引き起こす行動…!
えぐみを感じたのは半地下の家族も一般市民も逆らえず、逃げるしかない緊急事態において涼しい顔をしていられるのは圧倒的地上の住人のみということ。涼しい顔をしていられない点では一般市民も地下側も同じ。つまり(一応地上の)一般市民も半地下と地続きなんだなあと感じた。ひとごとじゃない。私の地下度合いはどれくらいだろう。思わず自分の上着の襟を嗅ぎたくなってしまった。
見終わった後、この映画は分類するなら何になるのだろう、と収まりどころを探しつつ衝撃にひたった。コメディ一色にもスリラー一色にもさせず、両方のカラーを新鮮に保ったまま怒涛の展開の中でシリアスさやえぐみを保つことろはさすが。
ちなみに、ラストのエンディングの曲が素晴らしい!
ややカントリーテイストの明るいメロディに乗せられる薄汚い生活感溢れる歌詞。力いっぱい吸い込むpm2.5/焼酎がふやかす爪の垢、という歌詞がとてもいい。これから映画館で見る方はさっさと席を立たずにこの曲を聴いてから地上の光を浴びましょう。