一見地味だけど一番映画のマジックが詰まってるところかも。
映画の音響にスポットを当てたドキュメンタリー作品。
前半では映画に音が無かった時代から今日の映画音響のシステムができるまでの歴史を、時代を切り拓いた音響デザイナーをフィーチャーしながら振り返ります。
誰もが聞いたことのある音を作ったデザイナー達の輝かしい仕事を取り上げていてワクワク✨
物好きの映画学生や若者がオスカー受賞者や著名なデザイナーになっていくのはサクセスストーリーとして楽しめるし、彼らの仕事によって音響の影響力がどんどん強くなっていく様子もとても興味深いです。
映画そのものに負けないくらいメイキングが面白い系の作品がたくさん出てきますが、話題を音響だけに絞ってもこれだけ見応えがあるとは驚き!
この世に無い音を作ったり、あるけどマイクが拾えなかった音を作ったり、画面に映っている空間を表現する音を作ったり、画面外の空間の音を作ったり…と追求心がすごいです。
「映画の50パーセントは音だ」なんてジョージ・ルーカスがインタビューで言ってましたが決して大げさな表現ではない気がします。
あと印象に残ったのは映画音響の世界が思ったよりも狭いということ。
人選をアカデミー賞クラスの著名な音響デザイナーに絞ったからというのもあるのかもしれませんがインタビュー受けてる人の半分くらいは知り合いみたいな感じでした。
何かトキワ荘的な閉じたレジェンドの世界を感じました。
後半は分業化された現代の音響制作の紹介。前半で取り上げられたパイオニア達が実験しながら確立させたことを役割を分けて地道にこなす人々の仕事ぶりを見ることができます。
分業とはいっても一つ一つの仕事を受け持つ人数が少なく、個人の領分が結構広い印象を受けました。
どんどん規模が大きくなっている視覚効果よりずっと少ない人数で、昔ながらの方法でやってるので職人という表現が似合います。
自分が鳴らした音やミックスした音がそのまま映画の印象を形作ることになるというのはめちゃくちゃ燃えるだろうなぁ。
前半のレジェンド達の華々しさと比べると後半はちょっと地味ですが、あの映画のあの音もわざわざ作ってたのか!みたいな驚きもあって退屈しませんでした。
月並みな感想ですが音が違和感無く鳴ってるのってすごいことなんだなぁと思いました。
音なんて空気みたいに当然あるものだと思ってしまってなかなかそのことに気づきませんが。
印象的な音はもちろん、何気ない生活音や会話にしたって録って出しという訳にはいかないしね。
映画音響に携わる人々の創意工夫や超地道な賃金労働があっての有声映画だということを忘れちゃダメですね。
これ観た直後に観た映画は音が鳴ってる限りどんな内容でもちょっとありがたみが増すんじゃないかなぁと思います。
映画を楽しむポイントが増えて得した気分になりそうなドキュメンタリーでした。