【「ジョーカー」(19)のネタバレ有り】
シリーズ第二作であり奇才ティム・バートンがフリーク(怪物)への愛を爆発させた哀しいクリスマス映画。
生まれつき奇形のために下水道に捨てられたペンギン男と社会から虐げられた非モテ猫女が今回の敵です。
今年公開の「ジョーカー」でトーマス・ウェイン黒幕説※を推す者としてはどうしてもペンギンとジョーカーを重ねてしまいます。
いずれも親に拒絶されて寄る辺を無くし、凶行に走ります。
ジョーカー=アーサー・フレックという人物について考えるには「バットマン」(89)や「ダークナイト」(08)など歴代ジョーカーの出てくる作品よりもまず本作を観るべきだと思います。
キャットウーマンやバットマンも社会のはみ出し者です。
バットマンは言わずもがな、キャットウーマンも怪人になる前のセリーナ・カイルのときから社会に馴染めない人物として描かれています(美人なのに恋人の一人もおらず猫やぬいぐるみと暮らしていることからそれが伺えます)。
リターンズもジョーカーも普通に生きられない者の苦しみをメインに据えているという点でかなり通じるところがあります(作品のテイストや結末は全然違いますが)。
本題から話がそれましたが、本作は暗いテーマを扱いながらもファンタジー色マシマシでそれなりにマイルドな作品に仕上がってます。
バートンのダークでゴシックな世界はバットマンの世界観とこれ以上ないくらいマッチしています。
敵がサーカス団の格好で襲ってきたり爆弾を背負ったペンギンが行進するなど子供っぽくて少々バカバカしいシーンもありますが。
しかしそういう子供っぽさを忘れるくらいにペンギンとキャットウーマンの演技が素晴らしく、大人の鑑賞にも耐える作品になっています。
バットマンやアメコミ映画の枠を超えてフリークの悲哀を扱った名作だと思います。
ダイハードやホームアローンでホリデーシーズン特有の温かく幸せな気分に浸っている人の顔に少し冷や水を浴びせるような映画です。
また、家族がいることのありがたさを逆説的に教えてくれます。
※ウェインが病院のカルテを書き換えさせて私生児のアーサーを使用人の養子に偽装して捨てたという説。(あくまで個人的な解釈です)