テルアビブ・オン・ファイア

【ネタバレ注意】
笑えない問題から生まれた笑える社会派コメディ。
物騒なタイトルに見えますが血も暴力も一切ありません。
代わりにあるのは素晴らしい脚本とユーモアと皮肉です。

【あらすじ】
1960年代の第3次中東戦争前夜を舞台にした人気メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」。その制作現場でインターンとして働くパレスチナ人の青年サラームは、撮影所へ通うため毎日イスラエルの検問所を通らなくてはならない。ある日、妻がドラマの大ファンだという検問所の主任アッシから脚本のアイデアをもらったサラームは、制作現場でそのアイデアを認められて脚本家へと出世するが……。

根が深過ぎてネタにしづらいパレスチナ問題を笑いに持っていった監督の手腕に感心しました。
しかもただ笑いにするだけでなくしっかりと問題提起もしてるから凄い!

脚本のアイデアを提供し続けた検問所のおっちゃんが軍人を辞めてシーズン2の主役になるというトンデモ展開はめちゃくちゃ笑えるのと同時に、現実に起きている問題には現実的な解決策など無く、少しでも状況が良くなるように試行し続けるしかない言っているようでハッとさせられます。

市井の人々の描き方も可笑しいのと同時に考えさせられます。
アラブとくっつくのか?ユダヤとくっつくのか?
パレスチナ人もイスラエル人も民族関係なく低俗なメロドラマに熱中していますが、ドラマの結末となると完全には忘れ去ることのできない対立意識が見えてきます。
恋のトライアングルから民族対立へと視聴者やスタッフの意識が移ったとき映画全体の雰囲気も変わるのが印象深いです。
パレスチナ、イスラエルの人々とスポンサーの新聞社とでは問題の受け止め方にかなり差はあるようでしたが…

単純なコメディではありませんが、全体的にコミカルな雰囲気で決して暗くはありません。
笑えるシーンは随所にあります。
また、主人公のロマンスが物語の中でかなり重要な役割を担っていて意味が分かったときに思わず膝を打ちたくなります。

普通なら逃げと取られる「結末先延ばし」をオチに持ってきて、現実から逃げずに問題に立ち向かう態度の象徴として描く脚本はうま過ぎてずるい!
その結果が検問所のおっちゃん主演のシーズン2というのはもっとずるいです笑

とにかくこの検問所のおっちゃんが良いキャラしてます。
自分勝手で職権乱用しまくりでめちゃくちゃな奴ですがなぜか憎めません。
おっちゃん主演の「テルアビブ・オン・ファイア シーズン2」が観たいなぁ

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