ドクター・スリープ

【ネタバレ注意】
Well…hi there!
新しいお客様だよ!
キングの小説『ドクタースリープ』の映画化でありキューブリックの映画「シャイニング」の続編。
キューブリックの映画版に不満を持って自分でテレビ版まで作ったキングも圧倒的な人気の差は認めざるを得ず、ドラマ版を無かったことにして映画版と矛盾の無い続編の映画化にGOサインを出しました。
その結果出来上がったのはキューブリック版からビジュアルを拝借したキングワールド炸裂の超能力バトル映画です。

【!TЯƎ⅃A ЯƎ⅃IOPƧ】
80年のオーバールックホテルの惨劇を生き延びたダニーは未だに過去の亡霊に脅かされ、恐怖から逃れるためにかつての父親のようにアル中になっていました。
しかし偶然訪れた街に公園の管理人の計らいで住むことになり、そこで中毒患者のグループセラピーに参加して禁酒に成功します。
さらにホスピスでシャイニングを使って今際の患者に安らかな最期を迎えさせる「ドクター・スリープ」として活躍します。
シャイニングにそんな能力があったとは!

禁酒に成功し、仕事と良き友人を得、悪夢を見ることもなくなり、ようやくまともな人生を送れるようになったと思っていた矢先、再びシャイニングで恐ろしいメッセージを受信します。「男の子が殺された!」
メッセージを送ったのは13歳の少女アブラ。
彼女もダニーのようにテレパシーを使ったり遠くで起きている出来事を見たりすることができる「輝き」を持った子供です。
彼女は謎の集団が男の子を誘拐して痛めつけて殺すところを「目撃」し、助けを求める声をダニーに送ります。

その頃、アメリカ国内では連続児童失踪事件が発生していました。
犯人は男の子を殺した例の集団。
彼らの正体は力を持つ特別な子供を痛めつけて殺し、その生気を吸い取って生きながらえる吸血鬼のような集団でした。
アブラは彼らの犯行現場を「目撃」したため、自分の存在を知られてしまいます。
特別な子供を餌食にする集団の存在とアブラの「輝き」の強さを知ったダニーはアブラを守るために罠を仕掛け、集団のリーダー、ローズ・ザ・ハット(帽子のローズ)と彼女の右腕のクロウ以外のメンバーを葬りさります。
しかし隙を突かれてクロウにアブラをさらわれてしまいます。
ところが強力な「輝き」を持つアブラは間抜けなクロウを出し抜いて殺害、脱出に成功。
一人残されたローズはアブラを倒そうとありったけの生気を吸い込んでパワーアップ。
今や彼女は様々な超能力を駆使する最強の存在。
ダニーは彼女をおびき寄せ、罠に嵌める場所としてあのホテルを選びます。

40年ぶりに訪れるホテル。
管理する者が居なくなってところどころ腐りかけてますが、外観も内装もあの頃とほとんど変わりません。
ダニーはホテルに住み着く者たちを起こそうと中を歩き回り、休憩がてらバーカウンターに座ります。
するといるはずのないバーテンダーが現れ、父が好きだったバーボンをグラスに注ぎます。
その姿は紛れもない自分の父親、ジャック・トランスその人でした。
しかし40年前、完全にホテルに取り込まれてしまったジャックはもはやダニーの父親ではなく、誰も訪れないホテルのバーテンダーでしかありませんでした。
父親だったものに差し出されたグラスをたたき割り、バーを後するダニー。

そうこうしている間にようやくローズが冬の夜道をドライブして到着。
ダニーが目覚めさせたホテルの住人たちがお客様をお出迎えします。
しかし吸血鬼のような存在には幽霊ホテルは別に怖くもなんともありません。
本物のお化けによるびっくりする仕掛けをするりとかわしてアブラとダニーを広間に追い詰めます。
ダニーは広間の階段でローズの行手を塞いでアブラを逃します。
ローズの圧倒的な力の前に手も足も出ないダニー。
さらに強力な「輝き」を持っていることがバレてローズに生気を吸いつくされそうになります。
万事休すと思われたその時、ローズの前に影が立ちはだかります。
なんとそこには前任者グレーディ、双子ちゃん、「盛会じゃね!」のおじさん、237号室の女など懐かしの面々が!
オーバールックホテル・オールスターズの前になす術もなく生気を吸い尽くされてローズは消滅します。

ローズとの戦いで致命傷を負ったダニーは父親の亡霊?に憑依され、アブラを殺そうとしますが、すんでのところで我に帰り、アブラに逃げるように命じます。
ダニーは栓を全開にして爆発寸前のボイラー室に向かい、最期に亡き母の姿を見てホテルと運命を共にします。

事件からしばらく時間が経ち、アブラの家庭にも平和が戻ります。
アブラが部屋で話しているのはホテルと共に燃え尽きたはずのダニー。
どうやら死んでも天国にも地獄にも行かず、シャイニングを持つ者の元に現れるようです。
また娘がおかしくなったんじゃないかと心配して部屋に誰かいるの?と尋ねる母に、「いるよ。死んでもどこにも行かない」と答えるアブラ。

(おわり)

本当に映画と矛盾しない続編になってました。
前作で殺されたはずのハロランさんが出てきたときはあれ?と思ったけどやっぱりシャイニングの霊体でした。
キューブリック版のビジュアルを使うに当たって前作と繋がるようにわざわざ原作からストーリーを変更しているそうです。
しかし設定や見た目は同じでも雰囲気はかなり違うものになっています。
キューブリック版はホテルの持つ力とそこに巣食うものがメインで超能力シャイニングはどちらかというとおまけみたいな扱いでした。
一方ドクター・スリープではシャイニングを描くのがメインでホテルの方がおまけです。
だからキューブリック版が好きな人からすると今回のホテルがシャイニングを使った超能力バトルの舞台程度の扱いなのに納得がいかないんじゃないかと思います。
ホテルに行くことによって何かシャイニングについて明らかになるわけでもダニーが父と和解する訳でもありません。
本当にただのキルボックスとして使うだけです。
ホテルの外に吸魂鬼の集団がいて超能力バトルを繰り広げていてもいいからホテルだけは聖域のままにしておいて欲しかった…

ホテルの内装や当時のキャストの再現度は高いだけに上部だけなぞってる感じなのが残念です。
実際今回のホテル全然怖くありません。
むしろ笑えます。
オーバールックオールスターズのシーンはコント見てるみたいで可笑しさが怖さを遥かに上回ります。

もっとも、どううまく料理しようとしても今さらあのホテルを描いてもギャグにしかならないんじゃないかという気もします。
キューブリックの作ったイメージがあまりにも強烈過ぎて数えきれないパロディやオマージュが生まれていますし、トイストーリーシリーズにすら目立たないシャイニングネタが毎回あるそうです。
現代人はキューブリック版のネタを刷り込まれて育っていると言っても過言ではない気がします。
だから今さら公式でキューブリック版のホテルを本気で再現しても良くできたパロディ映像の一つにしか見えないんですよね…

ホテルに行くまでのダークファンタジーパートは悪く無いんですけど、ホテルの神秘的なイメージとはどうしても相入れない気がします。
ローズとかいいキャラしてるんですけどね。

やっぱりキューブリックの作ったホテルのイメージがあまりにも強すぎます。
企画を通すうえでの条件とかもあるんでしょうが、キングはキューブリックの描いたホテルが自分の小説とは別物だと知りながらも使わざるを得なかったんですね。
観客はもとより原作者でさえもあのホテルの持つ力からは永遠に逃れられない運命のようです…

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